古本屋から見た『本なら売るほど』(児島 青)

 

古本屋から見た 『本なら売るほど』

古本屋が主人公の漫画といえば、最近では『善悪の屑』などが思い浮かびます。
もっとも、あの作品は古本屋を舞台にしてはいますが、あまり古本屋業とは関係ないかもしれません。

諸星大二郎の漫画『栞と紙魚子』にも、古本屋が登場します。そしてふと思い出したのが、『おまかせ!ピース電器店』でも、古本屋を営んでいるキャラクターがでてましたね。懐かしいです。

かつては「古本屋が主人公」という設定自体が珍しかったように思いますが、『ビブリア古書堂の事件手帖』のヒット以降、少しずつ市民権を得てきたようにも感じます。
ただ、作品数自体は依然として少なく、古本屋という商売が、本という商材も相まって、どこか“ファンタジー”のように見られがちなのも事実です。

そんな中で登場したのが、『本なら売るほど』(児島 青)。
第1巻は刊行当初、本当にどこへ行っても見つからず、私もようやく都内の書店(日本橋のタロー書房)でラスト1冊を手に入れたのを覚えています。
読んでみると、これが本当に面白かった。

特に印象に残っているのは、電気の通っていない部屋での買取のエピソード
。こういう場所に限って、コレクションが実に充実している、というもの。趣味がよく、筋が通っていて、守備範囲が広く、整理されていて美しい――けれど、その持ち主はもうこの世にいない。電気も通っていない、限られた時間の中で、山のように本がある……。
これ、古本屋をやっていると、けっこう「あるある」なのです(あくまで、私がそう認識しているだけかもしれませんが)。
こういった“あるある”とストーリーの絡ませ方が絶妙で、リアリティとフィクションのバランスがちょうどよかったです。
また、うっすら書かれている本棚に「クマさんの四季」らしき背表紙が描かれていたコマもよかったです。こういうところを見るのは職業病ですね。

なぜこんなにリアリティがあるのか。とある雑誌で著者のインタビューを読んだら、古本屋じゃない古物系でバイトをしていたようなニュアンスの発言をされていて、リアリティはそこからくるものなのだなと納得しました。

『本なら売るほど』は、古本屋好き・本好きならぜひ読んでほしい、おすすめの一冊です。2巻を読むのが楽しみです。

 


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