古本の世界へようこそ!3冊の「古本屋が書いた本」
古本の魅力は、単に古い本を手に入れることだけではありません。
そこには、本を巡る人々の人生や物語、そして時代の息吹が詰まっています。
今回は、そんな古本の世界を深く、そして楽しく味わえる3冊の書籍をご紹介いたします。
古本に興味がある方も、そうでない方も、きっと新たな発見があるはずです。
1. 「私の古本人生」藤井正(こつう豆本)
まずご紹介するのは、吉祥寺に今も店を構える名店、藤井書店の初代店主である藤井正氏の「私の古本人生」です。藤井氏は戦前、大分で古本屋を創業し、戦後東京の吉祥寺へと移転されました。この本には、氏のエッセイが数編収録されています。
特に、「K中尉の思い出」という章は名編として知られ、映画「ウォーナー謎のリスト」でもその話が登場するほどです。藤井氏の文章は本当に素晴らしく、古本業界では随一の筆力だと私は思っています。氏の人柄を偲ぶ座談会は、「古本屋的!」という本の雑誌社から出版された書籍にも掲載されていますので、ご興味があればぜひご覧になってみてください。
2. 「ある古本屋の生涯―谷中・鶉屋書店と私」青木正美(日本古書通信社)
次にご紹介するのは、青木正美氏の「ある古本屋の生涯―谷中・鶉屋書店と私」です。この本は、谷中の名物書店だった「鶉屋書店」と、その界隈、そして著者の青木氏(青木書店店主、故人)との関わりを描いています。
青木氏の本音が本当に素晴らしく、一人の人間が古本や業界とどのように向き合い、人生を歩んできたのかが、ひしひしと伝わってきます。青木氏の著作の中でも、本作と「古書肆・弘文荘訪問記 反町茂雄の晩年」は、古本業界を知る上で必読の名著だと私は思います。
3. 「奇想ヤフオク学: エーブックはどうやって古本を3億円売ったのか?」橋本憲範(平安工房)
最後にご紹介するのは、橋本憲範氏の「奇想ヤフオク学: エーブックはどうやって古本を3億円売ったのか?」です。戦後の古本業界において、ブックオフの登場、ヤフオクの登場、そしてせどらーの登場は、価値観を根底から揺るがす、大きな転換点でした。特に、せどらーがきっかけとなり古本屋になった方もとても多いです(業界大手のバリューブックスさんもそうですね)。
この本は、ヤフオクの栄枯盛衰など、単に成功談だけでなく、その光と影、そして当時の空気感が鮮やかに残されている、まさに貴重で唯一無二の一冊と言えるでしょう。出版社も平安工房という、古書わらべという屋号で古本屋もされている方が立ち上げた出版社という点も、古本好きにはたまらないポイントです。
他にも、宇田智子氏や内堀弘氏の書籍なども素晴らしいのですが、今回は私の個人的な好みでこの3冊を挙げさせていただきました。
どの本も、古本の奥深さ、面白さ、そして人々の情熱を感じさせてくれるものばかりです。
これらの本をきっかけに、あなたも古本の魅力に触れてみてはいかがでしょうか。